エーリク・ブルーン90
1926年4月7日生まれのエーリク・ブルーンは世界でもっとも作品を創出しているグラフィックデザイナーのひとりです。要塞の島スオメンリンナに暮らし、今もなお次々とポスターや切手、さまざまなアイデアを出し続けています。最近の仕事としてはポリ・ジャズの記念ポスター(2015)、羽根を描いた切手(2016)やアルクティアというシリーズ切手(2017)などがあり、さらに現在進行中のプロジェクトもあります。 エーリク・ブルーンの数多くの作品の中には、数多くの国内外コンペ受賞作品があり、表彰されています。表彰は、教授の名誉称号(1989)、グラフィアのプラチナフイップ(1999)、ヘルシンキ芸術デザイン大学名誉教授(2001)、スオミ賞(2004)、フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダル(2007)、ルオンノタール賞(2011)、ヘルシンキ市デザイン賞(2012)など。 エーリク・ブルーンはポスター500点以上、数十の切手、蔵書票、紙幣、企業や組織のロゴ、その他さまざまなパッケージデザインなどを手がけてきました。その他、異分野での発明や斬新なアイデアまでもがグラフィックデザインの過程で生まれてきました。たとえばソーラーパネル搭載の車、モダンなセーリングボートの発案などです。 さらに教鞭をとったり、グラフィック関係の組織の仕事をしたり、コンペの審査員、展示のデザインなど、さまざまな活動をしています。 1950年代60年代のポスターは、ぱっと見てブルーンの作品と分かる、また人々の目をひきつける特徴的な作品が次々と生まれました。代表的なポスターはヴェイッカウス、ハヴィ、ヤッファ、ステップ、ヴィップ、ヒュヴォンのポスターです。 観光、町、文化をテーマにしたもの、さらに森、水、自然の要素はブルーンが絵の創作で最も大切にしているものです。動物の定番といえば、特にサイマーワモンアザラシ(1974)。これはのちにフィンランド自然保護協会のロゴにもなりました。自然をモチーフにしたものは数知れず。とくにディテールにこだわりながらも新しいバリエーションで表現され、切手やポスターなどになりました。フローラ・フェンニカやフォレスト・フィンランドなどがそれです。 本の装丁により、ブルーンは新しいキャリアを歩みだすことになります。たとえば写真家マッティ・サーニオと一緒に作った『黒い冬、白い夏(1966)』です。さらにフィンセル社のアニュアルレポート、ブックス・フローム・フィンランドは何年にもわたって装丁を担当してきました。1980年代、ブルーンはスケッチを元に20マルッカと500マルッカの紙幣を、それから10、50、1000マルッカ紙幣の片面をデザインしました。紙幣はユーロの導入がはじまるまで続きました。またユーロについても、ブルーンは7種類のユーロ紙幣の原案を提案しています。 企業や組織のロゴですが、たとえば国立図書館、ティックリラ社、アモス・アンダーソン美術館、カスカス、ムシーッキ・ファッツェル、フィンランド政府観光局、メッツァ・セルラなどがブルーンのデザインです。ロゴは企業や組織の閉鎖や合併などの変遷に伴い消滅したり、新しいロゴになったりしていますが、部分的には企業の一部として、または組織の一部として残っており、何らかの変化はあるものの、今なおロゴが使われているところもあります。 エーリク・ブルーンは自分の創作過程でコンピューターを使わない、今日では稀なグラフィックデザイナーのひとりです。初期のポスターの多くがリトグラフで、これがブルーンの仕事の方法に大きく影響しています。この時期のポスターで有名なのはデスティネーション・ノース・フィンランド。文字のフォントも、ブルーンはペンによる手描きで行います。マーケット広場のそばの建物でひときわ人の目を引くPALACEというホテルの看板文字も手描きです。マーケット広場にはコルケアサーリ動物園へ行く船着場がありますが、このフェリーの旗もブルーンのデザインによるものです。